観護措置を防ぐための弁護活動

ア 家裁への送致手続

上で述べたとおり,少年事件においては「全件送致主義」が取られていますので,勾留の満期(通常であれば勾留請求日から10日間,延長されれば20日間)までには,事件が家庭裁判所に送致されます。

満期日以前に送致されることもあるため,担当検察官に確認をして正確な日時を把握する必要があります。

少年は,送致日の朝,勾留されていた警察署から車で検察庁に向かい,午後1時頃までには記録と共に家庭裁判所に送致されます(東京地裁での運用を前提にしています)。

その上で,家庭裁判所において裁判官の審問を受け,観護措置が取られるか否かが決定されます。観護措置とは,少年の心身の鑑別を行うために,少年を少年鑑別所に収容して観護に付する措置です。なお,観護措置には,在宅で調査官の観護に付する「在宅観護」もありますが,ほとんど活用されていません。

したがって,観護措置が取られれば少年は少年鑑別所に送られることになり,観護措置が取られなければ自宅に帰って少年審判を待つことになります。なお,弁護人は,少年が家裁に送致されたのちは,「付添人」という立場で活動することになります(新たな選任届が必要です)。

イ 観護措置を防ぐ活動

家裁送致前の弁護人の活動で最も重要なのは,観護措置を回避するための活動です。一般的に,下記の要件が満たされる場合に,観護措置に付されると言われています。

  1. 審判条件があること
  2. 少年が非行を犯したと疑うに足りる事情があること
  3. 審判を行う蓋然性があること
  4. 観護措置の必要性が認められること

4.「観護措置の必要性」については,以下のいずれかの事由がある場合に認められることになります。

  1. 身体拘束の必要性(住所不定,逃亡ないし罪証隠滅の恐れなど)
  2. 緊急保護の必要性(自傷,自殺の恐れ,家族からの虐待の恐れなど)
  3. 少年を収容して心身鑑別を行う必要性(継続的な行動観察や外観と遮断して鑑別を行う必要性など)

※3について,実務では,充実した心身鑑別の必要があれば足りると解されています。

弁護人としては,家裁送致日の段階で「観護措置の必要性がない」と言えるだけの状況になるように,家裁送致日までの10日間ないし20日間に,様々な活動を行います。少年審判における審判対象は,非行事実と要保護性です。ですので,家裁送致の段階で,少年の要保護性を減少させるための活動が完了しており,「家裁送致の段階で審判を開いても問題がない」といえるような状況にまで達していれば,もはや観護措置を取って心身鑑別を行う必要性はないと言えます。

そのためには,下記の「審判に向けての活動」の内容を前倒しで行い,家裁送致日までに,少年の要保護性をこれ以上ないほどに減少させておかなければなりません。少年自身と何度も話し合い,事件の原因を把握し,反省を深めてもらうことはもちろんですが,保護者や親族と協議して家庭環境を改善したり,学校や職場関係を調整したり,被害者への被害弁償を進めたりと,考え付く限りの活動を行います。

その上で,家裁送致日においては「付添人」として裁判官に面会し,観護措置の要件を満たさないこと,観護措置を付すことで少年に多大な不利益が生じることを伝えて観護措置を取らないように説得します。